門廻x廣田2

2日目~3日目 ― 門廻ケイジ → 廣田美弥子 以下交互


ぴーんぽーんぱーんぽーーーーーーんwwwwwwwwww迷子の迷子のミヤコちゃんカッコ独身カッコ閉じィ???wwwwwwwwwwwwお連れ様のシャーロック・ホームズが迷子センターでお待ちでぇーーーーーっす☆wwwwwwwwwwwwマジGODに天才過ぎる俺から至急用があるので30秒で支度して出てきなさぁーーーーーい☆wwwwwwwwwwww

(ケラケラと笑い叫びながら船内を走り回る糸目。完全に周りの『うわぁ』って目線が集まっている。いつものこと。
そんな訳でミヤコの個室前でドアからはみ出た白衣を見つけるね!!)

──およ?およ??およよよよよよよ???wwwwミヤコちゃんみーっけた☆
ミーーーーヤーーコちゃーーーーーんwwwwwwwwあーーそびーーましょぉーーーーーー????wwwwwwww
コンコンコンコン、コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンwwwwwwwwwwwwwwww

(めっっっちゃドアノックし始めます!!煩い!!いつものこと!!)

「全く……喧しいな。」

ひたすらのノックにヒステリーを起こしたドアの鈍い悲鳴に無理やり引き起こされ、聞こえた声に来客が誰か察する。呆れたように、寝起き特有の間延びし、弛緩した声音でそう咎めると、霞む視界で入口のドアノブに手をかけると、まだ働かない頭が、「どあをあけろ」と命令し、着の身着のまま、ならぬ、生身の身のまま、ほとんど裸同然にひっくり返ったりはだけたりした下着姿のまま、扉を開ける。酒をしこたま飲んだからか、または朝が弱いのか。
なんの頓着もまだ無い。

「もう少し静かにしたらどうだね、ケイジ。レディの部屋に入るっていう態度じゃあないぞ。」

などと、別に悪くもない気分で愚痴をこぼすその様は、大いに文句をつけられて然るべきだろう。
確かに、彼は女性の部屋に入るような行儀ではないだろうが、この女は、そもそも来客を迎える格好ではないのだから。
恋人相手なら、確かに尋常ではない背徳の趣と、甘美なる何かがあったろうが、これではまるで痴女でしかない。

!?!?!?!?!!?!?!?!おぎょh────ッッ、

(まさかの事態に奇声を上げそうになるケイジだったが口を抑えて耐える!!耐える!!
おっっっっっp!!!!めっちゃおっっっっっp!!!!目の前に広がる絶景の渓谷!!!!おっっっっっp!!!!あっっっっまい香り!!!!えッッッッッろいSI☆TA☆GI(良かったらミヤコちゃんの下着の色教えt(殴)
ええ、この男フリーイラストレーターなもんだから二次元のおっっっっっpならいくらでも見慣れてるんだけどもリアルのはオカンのシワシワに萎んだヤツ以外まっっったく見たことが無かったんですね、ええ。
そんな訳で、しかし幸運だったのがケイジ君の方が辛うじて背が高いのでちょーど壁になって通行中の人達にはあまり見えていない事!
キョドりながらも周囲をめっちゃキョロッキョロして片腕でミヤコちゃんをぎゅむと抱きしめるようにして覆い隠せばそのまま部屋の中へと押し込むように入ってって急いでドアをガチョンと閉めるね!!アッ女の子のおっっっっっpマジ異次元…(片腕で抱きしめながら)←)

──ぶッッッッッッふぉあwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwまッッッッッてwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwまッッッッッてちょwwwwwwwwwwww君wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwおっっっっっpげふんげふんwwwwwwwwwwwwHAwwwwwwwwDAwwwwwwwwKAwwwwwwwwwwいや裸で出るとかwwwwwwwwwwwwwwwwさっすが俺のブレインwwwwwwwwwwww天wwwwwwwwwwwwwwww才wwwwwwwwwwww
えッ何々君そんなに大胆な奴だったのぉ!?『きゃあん❤ケイジ先生アタシをた・べ・て?』みたいな奴だったのぉ!?!?そんなにお望みならば俺食ってあげようか?食っちゃおうかぁ???wwwwwwwwww
──っとまあ、そんなことはしないからさっさとその目障りではしたない恰好をどうにかしてくれよ助手くぅん??www

(と言って口元に手を当て笑いを堪え(るフリをして鼻血を隠し)ながら床に落ちていた白衣を拾い上げミヤコに渡せばそっぽを向くね!!渓谷から甘い香りがしt)

「全く、失礼なことを言ってくれる――…な……!?」

反駁しようとしたその時、残酷にも女の寝ぼけた頭は、言葉の意味を理解しようと、最悪のタイミングで覚醒してしまった。
別に服くらい着ているのに、と
視線を少し下にずらせば、投げ渡された白衣と、半ばはだけそうな黒いレースの下着。
そう、寝る時に脱いだそのまま出てしまった訳である。
その事を理解するが速いか、まるで顔の内側で湯でも沸かしたように顔は真っ赤に染まり、目の前が回転し出すと同時に、口から出た言葉はてんで訳のわからぬ内容であった。

「す、済まない!!??!?
私としたことが――――。
だ、だが、ご、ごごご誤解するな!?別にその、寝ぼけてただけで、私がアレな女な訳じゃあないからな!!?」

慌ててワイシャツとズボンを履きながら、どちらが実行犯か、もうてんで分からぬようなことをまくし立てる。
外に人間がいるのだとしたらまあ訝しげな目で見ている事だろうが、不幸中の幸いか、この痴態を目撃したのは、某天才を除き食料を詰めた歪な袋だけであったのだけは、ありがたい事だろう。
ただし、全く救いがあった訳ではないのは分かりきった話で。

「何の用だっていうんだ。
あと……見たか。」

取り敢えず窮地は脱し、一応服と呼べるものを着たあたりで、拗ねた猫か何かのように、そっぽを向きながら枕に顔を埋めながら、またもや自爆としかいいようがない問を投げかける。見てないはずも無いというのに。
こちらの持っている最大の用事を失念しながらそれを述べるのは実に滑稽でもあり。

思いっきり見た☆
いやぁwwwwwwでもそんなに恥ずかしがらなくて良いよぉ??wwwwww俺は別にミヤコの事アレな女とか思ってないしぃー??寧ろ見れてラッkげふんげふんwwwwwwww

(ここらへんあっさり言っちゃうとこケイジ君である。
でもまあ此処で見なかったと言うのもあまりにも無理がありすぎるしね。見てないとあんなこと言えないしね!!()
そろそろ大丈夫かと振り向けば枕に顔を埋めているミヤコの様子にニヤニヤする。だってあまりにもおかしすぎたものだから)

何の用って、君も薄々気づきはじめていたんじゃないのぉ~?
──俺達が天才過ぎるあまりに犯してしまった過ちに、ねぇ?
思ったんだよ。どうして俺達は文字に置き直して、しかも丁寧に漢字や感情記号に変換していたのか、ってね。この腕輪に入った放送音声は音声であって文字や文章じゃないじゃないかぁ~!!wwww
つ・ま・り☆このナゾナゾはただ聞いただけの『音』のみを捉えなければならなかったわけだ。そうなれば答えは──??最初の物から随分と変わるよねぇ?wwww

(そう解説すれば、恐らくこれで理解できるだろうと確信しつつ自身の腕輪に答えを入力し直しミヤコを一瞥する)

いやぁ~実に危ないところだったねぇwwww俺のような天才を引っ掛けるような問題を出すなんて、ゲームクリエイター君も中々やるねぇ?気付かなきゃミヤコと揃ってミートソースになるところだったよ~☆
ま、俺ってば歴史的超☆天才だからそんな引っ掛けにも気づいちゃうんだけどねぇ?wwwwww
ほんっと、ドカン☆しちゃう前にミヤコに会えて良かった良かったぁ~wwwwナゾナゾはこれで一安心ってとこ、だーけーどー…?

(肝心の用は済んだ。何もなければ、これで心残り無く安心できる
…はずだった。
ケイジはヘラヘラと笑いながらこつり、こつりとミヤコの前へと歩み寄って行き──)

──君は、大丈夫とは言えなさそうだねぇ?
……ミヤコ。

(…屈めば彼女のその頬を、水晶が伝い乾いたその跡を指でそっとなぞり、心配そうに覗き込む。
先程近くで見たために気付いてしまったのだ、彼女が一人孤独に抱え込んでいたもの、溢れ抑え切れなかったその跡を。)

「奇遇だな、私も君にそれを言いに行くつもりだったんだ。
まあ、君を信じると言った手前、君から言われるのを待っているつもりだったが…なるほど、信じてよかったらしい。」

全く、随分と馬鹿な間違いをしていたものだと答えを打ち直しながら、顔を上げる。
いつもの様に、目尻の下がる困ったような笑いには、安堵の中にティースプーン一杯ほどの疲労が掻き回されて混じっていた。
精神的、肉体的にも満身創痍の仕方ない状況ではあったとはいえ、寝ていたその最中すらも、気が気でなかったことが窺えるだろう。

「ふ、他人の心配なんて、随分君らしくないじゃあないか。
それを言ったら、一々悲しむなんて私らしくもない訳だが。

らしくない事ついでに―――……見た罰だ、暫く動くな。」

やれやれ、と目を伏せて、心配をかけないよう無理にからかって調子を合わせつつ、少しだけ声を震わせながら、縋り付くように心配げな相棒の胸に飛び込んだ。元々、大丈夫な、はずが無かった。最初から耐え切れるわけが無かったから、こんな中ですら他人に依存し、補助することで思考と判断から逃れて、寄生してきた。
ある意味、最も危険な博打に出ていたとも言えるだろう。
他人が死んでいる、という事実から逃げるために大ホールからすぐに立ち去ったし、なるだけ離れるようにしていたのもそのためだ。
不意に突き落とされる恐怖も、
その膿が吹き出した結果だ。
体に触れた体温と、脈打つ心音に、安心と、何もかも投げ出したくなるような妙な退行を覚えながら、自分ですら知らぬ間に、静かに瞳を濡らしていた。

俺らしくない??何言ってるんだぁいwwww
俺はただ──

……っ!

(言葉を続けようとしたその刹那、唐突に抱き着いてきたその体温に目を見開いて驚き…)

…俺はただ、ミヤコが悲しんでいる事が面白くないだけだよ。

(…そう言ってミヤコの震える背中を包み込むように抱きしめ、そっと艶やかな黒髪を撫でた。
その身体はあまりにも細く、柔らかく、今にも何かの拍子に脆く壊れてしまいそうな…けれども、間近に聞こえる微かな吐息、布越しでも伝わって来る体温と鼓動は、確かに彼女が此処に居る事を実感させ、同時にケイジもまたミヤコと同じようにその温もりの中に安堵を見出だすのだった)

…本当はねぇ?俺も怖かったんだ。
俺、丁度大ホールの真ん中近くに居たんだけどね?その時なぁーんにも気付かずに寝ててさぁ?wwミートソースがぶッかかって来たときは何が起こったのかまーったく分からなかったんだよ。
けどさぁ、周りの奴らの話から察して、腕輪から放送音声を聞いて。
…もしかしたら、俺が死んでいたのかもしれないなぁって思ったら、何をやっても本心から楽しめなくなってしまってた。
俺がああなのはいつものことだけどさぁ?いつも以上に、何か面白そうな事をしていないと俺自身が押し殺されてしまいそうでさ。周りはいつものように誰もが俺から離れていくからさ、ああでもしないとやってらんなかったんだよ。
…けどさ、ミヤコと会って、ミヤコが俺のことを拒否らずにブレインになるって言って、一緒についてきてくれて、俺を信じてくれて…
本当可笑しいぐらいにらしくないけどさ?…俺、ミヤコには感謝してるんだよ。

…大丈夫、ミヤコだけが“らしくない”んじゃない。“らしくない”のは、俺も同じだから。

(…体温を通して伝わるその感情は、恐怖は。ケイジもまた同じであり、あまりにも身に染みて同感できた。だからこそ目の前で彼女が泣きついている中、此処で無駄な虚勢を張る事は彼には出来なかった。
怖いと言うなど男のくせに、と思われるかもしれない。けれども、ある日突然、明日自分が生きているかも分からない状況に放り込まれた時、死と直面する恐怖に男も女もあるだろうか?)

でもねぇ?ミヤコは安心していいよ。なんたって、君の傍に居るのは絶世の大天才だからねぇ?ww
──大丈夫、ミヤコは俺が絶対に生きて帰す。
ミヤコはただ俺を信じてくれれば良いんだよ。

(大丈夫、大丈夫…何度も繰り返し言い聞かせ、落ち着かせるようにその頭を、その小さな背中を撫でる。
何度も何度も彼女の背を撫で慰める度に、彼自身も気付かない内にケイジの中ではとある“念い”が、転がる雪玉のように確かにその大きさを増していっていた…)

「…ああ、信じるさ。」

混ざりあったかのようにすら思う
体温に、夢か幻のように境界を見
失う。何が起こるかわからない、とち狂ったような死のゲームの最中だというのに。
何故だか、今の時間だけ、永遠だった。終焉だ
った。生きて帰す。と彼はいってくれた。
天才は、その約束をきっと果たしてくれるだろうと信じた。
全く、馬鹿な話だろう。
奪い合う中お互いを守るなんて、
寝言も良いところだ。
だがそれでも、信じてみたいと思った。生きて帰らせる、と言ってくれた彼を、生きて帰らせるために動こうと思った。体は脳を守るものなれば、脳もまた、体を生かすために働くものだから。

「だから――……私は、君を守ろう。私を生きて帰してくれる君を、生きて帰すさ。
ほら、私は君の脳(ブレイン)だって言ったろ?なら、身体(きみ)を守るために働くのが妥当じゃないか。」

目の淵にまだ涙の粒を浮かべながらも、精一杯、笑って向き合った。
守られるだけ、は我慢ならない。
もうたくさん、勇気をくれたから。
貰っている以上に、返せるように。そのためになら―――――戦える

およ、随分と勇敢な脳だねぇ。
なら、足手まといにならないように精々しっかりと働いてくれよぅ??www

(ミヤコの笑顔に、細い目を更に細めればこちらもニカッと笑い返し、その頭をくしゃくしゃと撫でた。
なんだか守られるというのも男らしくない。けれども、俺達が一蓮托生の相棒であり、脳がそれを望むのならば。
きっとミヤコとならば、なんだって解き明かしてみせられる。ミヤコとならば、最後まで手を引いていられる。ミヤコとならば、再び変わりばえのしない日々で再会し、笑い合える。そう信じられる。
なんてったって、ミヤコは超天才の俺が選んだ、超優秀なブレインなのだから。)

…さぁて、このまま俺は運命のジャッジメント☆タァーイムまで君と居ようかな?また泣かれちゃあ困るしねぇ?wwww
それとも、次のステージの為にでも何かしておくべきだと思うかい?俺のブレイン君?

(そう言ってミヤコの様子を伺う)

「ふ、冗談がきついよ、君は。
これじゃあわざわざ泣き止んでやった意味が無いし、食糧しかまだ揃えてないんだぞ?
感傷に浸るには、まだ、これだけじゃあ足りない。」

照れ臭いのと恥ずかしいのと、嬉しいのと。不意に見た暁のように、水彩をごちゃ混ぜにした何やら擽ったいものが胸の内に溢れて。それを零さないように、たまらず話題を変えた。
この暖かな何かを離したら、自分の魂魄すら離れていってしまいそうで。平生通りの素行、という見えざる鳥籠に閉じ込めた。
ここで接吻の一つでも求めて、いっその事抱かれてしまえば可愛げのある娘だったろうが、生憎その指摘は二十年は遅いと言える。
遥か前から、女は「少女」であることを放棄する必要があったから、感性や思考の源泉とも言うべきものの大半は経年劣化した様々な膿に毒されていたし、それから汲み上げてくるものもまた、無論ながら実に汚濁し、乾燥していた。だから、素直に初心な感情で動くには、精神の限界くらいの劇薬が必要であったし、こぼす涙すら、砂漠の慈雨に等しい希少さと陳腐さがあった。
簡単な話が、不器用なのである。
でなければ、わざわざここまでの情緒を現実に引き渡すような愚行はしないであろう。
程よくおだやかな照明、まだ僅かに暖かいベッド、バツが悪そうにあちらを向いた食糧の袋、沸かしてある風呂。それら全てから、ため息が聞こえたような気がして、辺りを2度目に見渡す頃には、部屋の中は随分と白々しくなっていた。高級な様子を気取る割には実に下品で失敬なものだ、と女のうちには妙な怒りが去来したが、口に出すことはなく、代わりに、踏み躙るように緩慢に立ち上がり、肩をぽきりぽきりと鳴らしながら、大きく伸びをした。そこには、毒気を浴びた汚泥のように陰惨に絡みついた不安からの、明らかなる解放の色があったのは想像に難くない。

「……ケイジ。つかぬ事を聞くんだが、君は炭酸飲料は好きかい?瓶のやつ。少し面白い実験をするつもりなんだが、どうだね。」

とうとう、ぶち壊しであった。
今や視界に映る画面自体に亀裂が入ったような気がして、女は静かに、また、清々しい何かを感じつつ。そんな色めいたものの香は何も知らぬ、とでも言うかのように、首を傾げた。涙のあとは、とうに乾いていた。

およっ!!炭酸は好きだよぉ~!!だぁーってあれ飲んでも“遊んでも”楽しいじゃなぁ~い??wwwwwwもっちろん!!面白い事なら俺は喜んでやるよ~wwwwwwあ、もしかしてもしかしてぇ?実験ってぇ…あれのことだったりするのかなぁ??wwww

(そしてそれはまたケイジも同じだった。
いやもうそこは抱いちゃえよ!!抱いちゃえよ!!夫婦しちゃえよ!!もういっそゴールインしろよこの夫婦め!!って中の人がちょっと思ってたりしたのとは裏腹に、天然シリアスブレイカーのこの糸目はそういうのとは精神的にあまりにも程遠く、幼過ぎた。
面白い実験、と聞いて途端に小学生の悪戯なガキのように目をパァッと輝かせれば、あれかな?これかな?と思考しながらわっくわっくしてミヤコの言葉を待つ)

「まあ、簡単な話だが、相手が武器を持っていた場合、それを超える武器を出すのは基本中の基本だ。剣が槍に、槍が弓に、弓が銃に、という具合に。」

その変遷が、近代における軍事ドクトリンの礎となっていく。
陸ならば、隊列を組んで密集していたのが、機銃で薙ぎ倒され、それで固めた要塞が強くなったし、要塞までを目指すために塹壕が生まれ、浸透戦術など様々な歩兵戦術が花開いた。
海ならば、艦砲射撃の到達として、大口径の砲を持った堅いものを、とくれば大艦巨砲主義が生まれたし、更にそれを倒せるほどに航空機が強くなってからは、空母の集中運用に変わった。
主力兵器の変わりようとは、流石にこれほど単純ではないし、若干の差異があれども、弱肉強食のごとき進化の上であったのは概ね間違いあるまい。だから、殺されないための盤石を備えるには、普通に手に入る武器では無理がある。
わかりやすい包丁なんかでは、相手も備えようと思う。
―――だから、それを超える。


「なら、一番強いのは何か、という話になる訳だが…日用品しかないこの場所で作るなら間違いなく、モロトフカクテル。まあ所謂、火炎瓶が最強だろうさ。爆弾を抜きにするならね。」

東大全共闘、日本赤軍様様だ、と今回だけは思った。
明確な武器がそうなく、化学物質も許可が必要、銃など以ての外、なんて言う特殊な国、日本の過激な団体は、よほどのことがない限りは総じて日用品から武器を作る。勿論、日用品ですら満足ではないし、買いにも行けない。けれど、彼らの用いた、着火が不要な軍用品と同じ出来のは無理としても、構造が簡単かつ、事件のせいで大体の作り方が流出、そして、ネットなどでさらに簡易化してくれていた時点でもう、御の字だ。

「……私達が殺さないとしても、私達を殺そうとする奴らはいるかも知れない。だから、暴力装置として、抑止力として、こういうのは必要だろう?

と、言うわけで――……あるだけ瓶と油をとってこーいケイジ!!私はここを見張らなくちゃならないからね。帰ってきたら、そうだな。専門外だが特別に、理科をやってやる。」

とはいえ、兵器史の賜物、というべき話だとするなら、断固として拒否するのだが。

え、やだ☆

(にぱっ☆と笑って即答するケイジ。彼ならば簡単に食いつきそうな提案だというのに、何が気に食わなかったのだろうかと思えば…)

だぁーってさぁ?せーっかく超絶☆大天才の俺に取ってきてもらうのに『とってこーい』じゃないでしょお~??wwww俺は頭脳明晰の超名探偵で君は助手だよぉ~?本来君が取って来るべきなんだよぉ~??頼み方が間違ってるんじゃなぁ~い??wwwwww
ほらほらほらミヤコちゃあ~ん?ハイッ!!もーいっかいやり直し☆『お願いします❤どうか油と瓶を取ってきてくださいケイジ様❤』はぁ~?wwwwww

(…そこだった。自身は他人にやりまくってる癖して他の人から上から目線をされるのは嫌らしい。恐らくここを妥協しなければ彼は絶対に動かないだろう。
ケイジはニヤニヤしながらミヤコを見つめ…)

「それを言うくらいなら、私が取りに行くほうが早い。ここは任せるぞ、帰ってこなかったら助けに来てくれ。」

ベルト穴に差した、鈍く光る牛刀の向きを整えながら、上着を放り投げるように豪快に靡かせながら身に纏う。そろそろ安全地帯に居座っておく腹積もりであったが、確かに、助手を引き受けた以上はこういうのが仕事になるのは妥当である。分かりきっていた話ではあるが、相手が相手、格好がついているままなら随分良い男だと思ったものを、若干の落胆が無くはない。だが、最初から、台風みたいなものだったのを踏まえれば、どちらかというと、文字通り自然現象よろしく、思うままにしよう、とは思わず、それに合わせて舵を取り、引く時は引き、頼る時は頼る。そう付き合っていくのがこれは最適解かもしれない。
枕の中身を抜いて袋を作って出ていくと、数分後、調理用油、瓶のコーラやデカビタ、オロナミンCなどを数本ずつ、袋に詰めて持っていき、ついでに、リキュールを一本。割って飲むためにか持ってくる。 歪な形の袋に詰められたこの重さが全部武器になると考えれば、頼もしいを通り越して空恐ろしいが。

「さて、地味な作業の開始だ。これを全て、飲むか捨てるかする必要があるが…勿体無いし飲むか。なんだかんだ、落ち着いて話す暇すらなかったしな。ちょうど良いかもしれん。」

と、客室らしく上等そうに見える椅子を二つ引いて、丸テーブルの上に、グラスとジュース、リキュールを並べる。
そう言えば、お互いのことを深くは話した覚えがないから、こういうどうしても時間が取られるのは良い機会だろう。何か話すことがこちらにあるのかは、別だが。

ちぇっ、可愛いげが無いなぁ~ミヤコちゃんは。

(口を尖らせてぷーッと頬を膨らませば頬杖をついてミヤコを待つ。いや、ミヤコがそうやすやすと『ケイジ様❤』なんて言うとは思ってなかったけどさぁ?思ってなかったけどさぁ?ちょっとぐらい期待に答えてくれても良いじゃん?
それにしても、牛刀なんて腰にさしちゃって、見た目に反して本当随分と男勝りで勇敢な女の子だ。そんなに強がらなくとも、さっきみたいに素直に泣きついたり笑ったりしたら、独身なんかじゃなくなるだろうに。
そんなことを思いながら帰りを待っていた。)

おっかえりぃ~☆随分と詰め込んで来たねぇ?wwww
あっ!!はいはい俺コーラとリキュール混ぜたい!! 俺さ俺さ、ジュースみたいなカクテルとかすっごい好きなんだよねぇ~wwwwwwま、カフェで酒抜きのそれっぽいの作ろうとしたら邪気を払い過ぎて人を殺す聖☆水が出来上がっちゃったけどねぇ??wwwwww

(そう、カフェで桐間(と他モブ数名)が被害者となっていた聖☆水だが、ケイジはアルコール抜きのカクテル(つまりはミックスジュース)を作ろうとしていた訳である。まあこいつ味のセンスはクソなんだけどね!!()
その結果はファミレスで全部の飲み物を混ぜたものの数十倍マズイと言えば察せるかもしれない。ちなみに今もカフェにはストックがいーっぱいあるよ❤←)

何何?何をお話するぅ??俺はなぁーんでも良いよぉ!!あ、ミヤコのスリーサイズの話でもするぅ??wwwwなぁーんて、うっそうっそぉ~☆wwwwwwww
ま、そうだねぇ…助手である君には俺の事を知るためになぁーんでも質問していい権利を与えよう☆その代わり、俺もミヤコのあんなことやこんなこと聞いちゃうけどねぇ??wwww

(ヘラヘラと笑いながらそう言って)

「はいはい、好きにしろ。
一つずつ混ぜる分には……ぎりぎり、大丈夫だろうからな。」

ぎりぎり、と付け足したのは、それでも失敗しそうな可能性を見出したからに他ならない。
茶色い瓶入りのデカビタの、昔ながらの黄色いアルミのキャップを外すと、頼まれてもそんなもの飲んでやるか、という気持ちと、既に生み出してしまった遺物の後始末をやっておかねば、という倦怠感から、吃るように声音を落とし、頭を抱えた。

「スリーサイズ?減るもんじゃあないから教えてやらなくもないが――……そうだな。なら、ケイジはここから出たら何がしたい?」

なんて、そんな気もないくせにからかうと、一本目をグラスに注ぎ、一口に飲み干した。喉の奥に弾ける泡沫の爽快感と、エナジードリンク系特有の甘ったるい甘味料の粘つきに、日常を垣間見れば、僅かながらに前向きになれたのか、そんなことを問う。
帰ったら、何をしようか。と考えれば考えるほど、道を踏み外しそうになる恐怖と、逸脱への快楽に脳の中は痺れ、めちゃくちゃにされていて。その孤独感を紛らわす為にも、いざと言う時踏みとどまる為にも。内側にある黒いものを告白することを決意した。
それは実に不気味で、唾棄すべきものだと自嘲しながら。

およっ?俺が此処から出たら??
んー、そうだねぇ…俺がいっつもやってることやるかな☆
絵描いてー、gdgdしてー、やな仕事依頼のメールは全部ゴミ箱に捨てちゃえー☆してー、暇になったら近所をピンポンダッシュしてまわってぇ??wwwwwwきっと俺は特別なことはやらないよぉ~?だぁーってつい最近まで非日常的な所へ放り込まれていたんだからぁwwww
…あ!!でもその前にミヤコにちょーっと会いに行くかもねぇ?wwww君ん家の前へ飛んでいって10秒に一回ピンポンダッシュして元気な君がドアから出てきたら俺の目論みは大成功だ☆

(グラス…でなくわざわざ瓶から瓶へとドボドボと飲料をぶち込み混ぜながら話すケイジ。どう聞いても普通の大人が過ごす日常とは掛け離れてはいるというか、長期休暇中の小学生のガキの一日と変わらない気がするが、これが正真正銘彼の日常である。
きっとそんなありふれた(?)日常に戻るのだろうと彼は語るが、ふとミヤコに会いに行くかもしれないなんて事を言い出す。たとえいつもの日常に再び引き戻されたとしても、きっと自分は、何かもの足りない“空虚”を感じる。悪夢のような時間の中で、その隣にいた存在を。不安を分かち合い、『生きて帰す』と互いに誓ったかけがえのない相棒のことが、きっと気になって仕方がなくなる。
…そうしてもう一度、その手を引きに外へ飛び出すのだ。)

ま、俺はそんな感じかなぁ~?wwww
そんなことを聞くミヤコは、此処から出たら何がしたいんだい?

(一つ空っぽになった瓶をコンコンと弾きながら尋ねて)

「それは良いな、カクテルでも用意して待っていよう。チャーチル・マティーニはお好きかな?

……と、お行儀が悪いじゃないか。天才なら、テーブルマナー位は出来るものだとかねがね聞いていたが、まさか…天才じゃあなかったのかい?君は。」

頬杖をつき、片手で二杯目の金色がグラスをつまみながら微笑して、ふふ、と息を吹くように笑った。
チャーチル・マティーニとは、先述したがヴェルモットの瓶を横目に見ながらジンを飲むことであり、用意するというのは不可能。
十分熟したその頃には、とっくに飲み終わっているのだから。
さも、心待ちにしているように言っておきながら、実は"酒でも飲んで適当に待っておく"という意味を伝えるジョークであった。
気付くかは神のみぞ知る。
だが、これは別に何か他意がある訳では無い。どんなときも、停滞した日常、という牢獄から引っ張り出してくれる存在であって欲しいのだ。忘却に塗り潰されていく残骸の山を吹き飛ばし、出来事が暴風のように滅茶苦茶に入り交じった、輝きを与える嵐であって欲しいのだ。だから、それを待つには身構えてはいけない。
そうしたら、多分、着いていけなくなるだろう。この彼の居ない世界の遅さに。

と、珍しく肯定のみを並べていたら、やはり水を差された。
零れた分を、備え付きのティッシュで拭き取ると、また頭を抱える。どうやら、少しもこの男を純粋に好ましく思える時間を神はくれないらしいから皮肉である。

「私には難病の妹が居てな。
私は、彼女を……これまでの病院より良いところに移して、この事件を告発しようと思う。

生憎だが、平和、というのはすぐに消えるのは身に染みてわかった。金がかかっても、まだ設備が良い方が良いだろう。
後者は―――…言わずもがな、こんなことをしかけた奴らを許せないから、だな。
詰まらなくて済まんね。」

後から思うと、この嘘は、永い熟慮とためらいがこれまでに累積して生まれた、最期の救いの可能性を断つ為の悪魔の手だったように思われる。だが、女はそれを、まだ理解していなかった。
出し抜けの衝動にかられた行為だと、恥じていたからこそ、後者は嘘偽りを言わなかった。
異常性の中で行われる、という自然なる死を見て一種の、えも言われぬ解放の感動すら抱き、平和なるものがどれだけ寿命の短い資源かを知り、何より、自分の日常に色を付け、在り来りな日を退屈なる日に変えた人間がいた。
そこまでの方程式が揃った今、こう思われるのになんの残虐と背徳があろうか。ともあれこの黒い想念はやおら光を発し始め、突如として当然の理のように胸の内を支配し、あかあかと己の見た啓示を映し出した。寧ろ、女自身がそれの内側に飲まれたと言っても良い。その想念とは、概ねこうであった。『自分の尊い平和なる日々は、果たして他人に搾取されて良いのか。』というものと、もう一つ。『それから逃げるには、⚫⚫を⚫⚫さねばらぬ。』というものであった。恐らくそれは、本能である。しかし、生存を必ずしも目的としない、歪なるものである。
極端な試しを出すなら、考えの道をひらく割に、最終的には生きて終わりやしない"武士道"にも近い。過程も目的も道理も違うが、終わりへの無邪気な憧れは、恐らく同じ色をしていただろう。

およっ!!それは嬉しいねぇ~wwwwチャーチル・マティーニ??イギリス首相だかなんだかよく知らないけど、俺美味しいのだったらなんでも飲むよ☆

なぁーにを言ってるんだい!?俺は正真正銘天才の天才の大天才だよぉ~??天才がテーブルマナーが出来るぅ??そんなの誰から聞いたんだい!!俺そういうレッテルだいっ嫌い!!!!そーいうマナーだの常識だのをぶっ壊し新たなものを作り上げるからこそ天才なんじゃないかぁ~!!全く、そんなこと言ったそいつは何も分かってないねぇ?あ、もしかしてそいつ天才じゃないんじゃなぁ~い??wwww

(残念!!こいつは大人のジョークなんて知らなかった!!あとカクテルは好きだけどとくに博識じゃなかった!!まあ天才でしか無いからね!!博識や秀才とは違うからね!!中身ガキだからね!!←
まあそんな訳で、そんな奴である。けれども、いつの時代でも天才と呼ばれる人は当時からすれば世間知らずだったり群れから弾かれるような存在だったりするのは事実である。しかしその異常さこそが新たなるものを作りだし世を変え時代を変えて常識を塗り変えてきたのだ。
…まあ、ケイジの『常識』が世界の常識となる日は限りなく来なさそうだが。)

およっ?なんか意外だったねぇ?
──君、図書室の写真が酷く気味悪いなんて言うから、何かあるのだとばかり思ってたけど。

(きょとんとして首を傾げるケイジ。
…常人ならば此処で妹想いの姉を褒めたたえるのだろうが、こいつは違った。
天才はあまりにも幼く、あまりにも非常識で、あまりにも無知だが、あまりにも目敏かった。…頬を濡らした水晶の跡であれ、彼女の混濁した念いからなる嘘であれ。
ケイジは肩に置かれた彼女の手の震えを未だに覚えていた。幸せそうな家族が映し出されるそれを気味悪いと言う、それは詳細は知れないとはいえ家族との何かしらの不調和、もしくはそういった念いをただの不平不満等で片付けられるようなものではないほど抱え込んでいると想定するのは、さほど難しくはないだろう。
しかし、目の前にいる彼女は妹想いの優しい姉。その行為や想いひ不調和のフの字も見当たらない。それを否定してしまえば彼女の妹への良心を否定することになるのだから、此処で普通の人ならば言わずに留めるのだろうが、天才は躊躇うこと無くあっさりと言ってしまうのだった。)

──それ、本当に君がしたいこと?

「……はは、天才にはお見通しか。告発は確かにしようと思う。これは嘘をついていない。
生き残りの義務としてな。」

乾いた笑いが、微かに漏れた。
言わぬが花、というものだろうに、と女は内心嘆息しながら、困ったように目尻を下げる。
元より、こういう、何もしなければ良いところでずかずかと入り込んだことをするのが、この天才の悪癖であり、また、頼もしく思えた武器なのだ。受け入れよう、と静かに思えた。それは、断頭台にかけられた貴族が最期に見る景色にも似ていたことだろう。何を言われようが、もう仕方が無い。今、自分を支配するものを吐露すれば、後戻りはできないのは分かりきっている。それでも、女は彼に嘘偽りを告げる苦しみの方が大きくなっていたのだ。

「だが、こうやって、生き死にがかかった場所にばかり居ると、日常がどれだけ大事か知ると……酷く当たり障りのない日が大事に思えてくる。それをすり減らすのが、凄く怖く思えてくるんだ。
―――……済まない、教師のくせに、言いたいことが纏まらないな。結局、私はどうしたいんだろうか。もう、なんだかよく分からないよ――――――――」

一直線に、助けて、という言葉をかけるには、勇気が足りなかった。回り回って、言い訳を零して、ごちゃまぜになって絡まって、掴めそうになった蜘蛛の糸は、記憶の底に無理やり埋めていた、気色の悪い音声に、無残にも引き裂かれた。
悪意ある神罰でしかなかった。
願いを叶えるから、人を殺せ。
殺さなければ、誰かが死ぬ。
その言葉は、総身に力を込めて縋ろうとした思いすら、一気に押し潰される万力の如き力で、また一つ、救われる道を砕いた。

「け、ケイジ……どうする。
武器の原料なら、あるが……
誰かが殺らなくちゃあ、私達が死ぬかもしれないぞ。」

震えた声で投げかける問いは、余りにも悲惨であった。

…………
全く、意地の悪いド●ゴンボールだねぇ。
君(主催者)を殺すという選択肢は無いのかい?

(薄く目を開き、何処からか流れた放送の音声を仰ぎ睨む。
参加者に向けられたそれは、選択の自由を与えられているようで実質参加者の殺人を強制するようなものだった。)

──クソ教師の君に、俺が今から大切なことを教えてあげよう。
人間とは、本来自由な生き物なんだよ。自由に生きる義務があり、自由に生きる権利がある。
そして同時に、人は一人では生きていけない。これも紛れも無い事実だ。けれどねぇ?これが『人に従わなければいけない』だとか、『人が造った常識に従わなければいけない』だとか、そういったように勘違いする族が今の世の中じゃ大半なんだ。それが結局、自由に生きるどころか自分で自分の自由を拘束する事になるとも知らずに、ねぇ?
…そうして稀に、自分自身を自由に生きられなくなった人間は、他人の自由を支配し従わせることで自由に似たような束の間の快楽を得ようとするのさ。本来自身の意図で自分をがんじがらめにしてるのだから、そんなことしたってなぁーんの解決にもならないのにねぇ?
今まさに、俺達を監禁しルールを提示する事で自分の意図に従わせようとするゲームクリエイター君なんかが、良い例だよ。

(そう語り大きく溜息をつけば、不意に椅子から立ち上がった)

…さて、どうするって話だったねぇ?
俺は、ゲームクリエイター君に服従する気はさらさら無いよ。だぁーって、あんなクソムシの意図にまんまと乗るのも気に食わないじゃなぁ~い!!wwwwwwそれに、神龍でも無いくせに本当に願いを叶えてくれるかも怪しいしねぇ??wwww
──けど、彼の馬鹿げた新ルールが普通に聞いたそのままの通りだったとしたら、何か行動しなくちゃあならない。
彼のルールに則らなければ、俺らは彼に『生きる自由』を支配される事になる。かといって、彼のルールに則り殺人を犯せば、それは被害者の『生きる自由』を支配したこととなり、同時に自分の自由意思でなくクリエイター君の意図に服従したこととなる。
俺ら以外の欲の深い人間が誰かを殺すことを期待する、ってのも不確定要素だ。この客船の中に心から死ぬことを望んでいる変態が一人でも居れば万事解決する方法もあるっちゃあるんだけどねぇ?そんな奴はそうそう見つからないでしょ。

つ、ま、り?この状況から抜け出す方法はたった一つだ☆

(ケイジはニィと妖しく笑えば、懐から一本のカッターナイフを取りだし、チキチキと気味の悪い音が二人の居る部屋に反響する。
…主催者は、別に『他人を殺せ』とは言ってなかったのだ。つまりもう一つ見えるその方法は、恐らく主催者の本来の意図と反するだろうが、それで良い。)


──全員に本来の自由を返したまえ、主催者君。
あ、ついでに君も豆腐の角に頭をぶつけて無様に死んでくれたら嬉しいかなぁ??wwww


(そういって“天”を見、嘲り笑う糸目の天才は、主催者ではなく、自分の意図、自分の自由意思で。
──カッターナイフの矛先を、自身の喉元に突き立てんとした。)

「ケイジ―――――ッ!!!」

どんなにか厳しい追求の言葉がくるものかと構えていれば、ふと述べられたのは、更に恐るべきそれであった。
自分の願いと嘲弄を述べ、喉元に突き立てられんとする白刃。
それは、真っ直ぐ吸い込まれるように、間違いなく急所にしか見えない場所へと向かい―――――

「私を、生きて帰すって言ったろう……?私が、生きて帰すって言ったろう?早まるな、馬鹿。」

寸前で止まった。
いや。止めたものがあった。
カッターを握る両手を上から掴み、総身の力を振り絞り抑え込む。仮に、死ななかったからと言って何か考えがある訳では無い。けれど、動かない、ということはそれ以上に有り得なかった。

「……私に考えがある。通じるか分からんがな。」

なんて出任せを吐くくらいには。

……君の言う通りだ。
俺としたことが、君との約束を破ってしまうところだったよ。

(自身の手を掴むその細い指に、ニッと笑えば刃を握りしめた手をゆっくり、ゆっくりと降ろしていく。
…勿論、彼は死にたがりでは無い。かといって、危険な行為に至ったのは決してこのゲームの主催者に刃向かうそれのみの為では無い。
思考の読めない独特なその笑みの奥では、にこやかな表情とは裏腹に約束なぞ忘れ去る程かなり精神的にきていたのか、それとも自身の生命など容易に捨てられる程の何か念いを内側で孕んでいるのか。はたまた…
…このゲームの中で一番の難解な謎は、実はこの男なのかも知れない。)

およっ!!さっすが俺のブレイン君だ☆
何何?どんな策を思いついたんだぁい??

(先程まで自身の生命線に向けていたカッターをあっさりとしまってしまうと先程のシリアスな雰囲気とは一転。まるで面白い悪戯の作戦を聞く小学生のガキのようにわっくわっくしながら楽しそうに聞く)

「あ、ああ、それは――――っ!?」

しどろもどろになりながら、吃ったように迂回に迂回を重ねて、なんとか導き出すまで時間を稼ぐつもりであった。もったいぶるだけもったいぶるのも良いかも知れない、と、焼け石に水でしかない小細工をどうにかこうにかこねくり回し、結果、それは今、すぐ側から聞こえた爆発音に杞憂に終わる。何が起きたか、それはすぐに分かった。先程の彼と同じことをしたか、または、殺しがあったか。しかし、時限爆弾やその他諸々の遠隔装置なんてまあ手に入らない中、果たしてリスクを犯さずにあれほどの爆発を起こせるか。間違いなく、否だ。

「……使う意味は、なくなったな、恐らく。済まんが、少し私は出るぞ。食糧はそちらで持っておいてくれ、やらなきゃいけない事がある―――――!!!」

だから、急いだ。
なりふり構わず食糧を放り投げ、なけなしの火炎瓶を一発もって、現場に走った。
そう、殺害記録は死体に腕輪を翳すことで行われる。
仮に殺人の有無をそれで判断したならば、別段、新しい死体でさえあれば良い可能性があるし、それが合致すれば、これで終わらせられるかもしれない。誰も望まない、殺し合いを。

……およよ。

(止める間もなくミヤコは行ってしまった。
彼女の香りが微かに残る空虚な部屋で、一人糸目は残される。
あの爆発から察するに、恐らくどこかで誰かが自殺した。だというのに、腕輪からは音声は流れない。)

……実につまらないね。

(ケイジは大きく溜息をつくと、傍の椅子にどっかりと座り背もたれに全体重を任せる。
…聖人は嫌いだ。自分の身を犠牲にしてまで、醜い人間の悪意ある手にまんまと乗る聖人は。
音声は鳴り響かない、つまり自身の身を焼いた人物の決意は、善意は、『殺人でなく自殺だったから』という一言で終わらせられた可能性もありうるかもしれない。)

…全く、センスの無いブラックジョークだよ。
吉本興業にでも行って修行しに行ったらどうだい、ゲームクリエイターくぅん??

(テーブルの上に置かれた液体の入った瓶を掴めば、何処かで自分達を見ているであろう傍観者に向けて、グラスに特製ハイブリッドドリンクを注ぎ込む。
そうして、彼女の…ミヤコの香だけが残された部屋をぐるりと見渡した。
…あの様子からして、恐らくミヤコは、死体を認証しに行ったのだろう。わざわざ火炎瓶等を持って行って、そんなことをすれば、君にありもしない罪が爆発音に集まった野次馬達によってかけられてしまうかもしれないというのに。
いや、そもそも。自分が『殺人履歴』について怪しいと、認証すべきでないと最初に言ったはずだったのに。既に答は解き、君は『天才を信じる』と言ったのに。
彼女は…自分が、天才である俺が、どれだけ君の身を思っていたのか、知りはしないだろう。)

…ねぇ、ミヤコ。
天才の俺に食糧のおもりをさせるのは、可笑しいんじゃなぁい?

(──ケイジは徐に椅子から立ち上がれば部屋から飛び出し、爆発音のした方へ…彼女の向かった方へと駆けて行った。)

  • 最終更新:2018-02-28 15:48:21

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