菜々宮x碧

prolog ― 菜々宮 千晴 → 碧 麟(青龍 結麒) 以下交互

(桃色の髪をした少女(少年)が、ぱたりと息絶えたように倒れている。)

「すぴー………、すや…」

(というより、紛らわしいながら寝ているだけだ。
眠気に勝てなかったという点では気絶しているとも言えるかもしれないが、体調不良や負傷により意識を失った訳ではないので、寝顔は実に心地良さそうである。)

あ?
あー………
えええ………
(いやほら外で人が倒れてるとかないし。倒れてるならまだわかる(わからないけどわかる)けど、寝てるのはわからない。わかるわけがない。いや外でってどう寝るのさ。そんなわけでその少女を見つけて思考停止して、そして。そのご)

おきろ、嬢ちゃん
(声を、かけた)

「う…うぅん……ちがうよ…厚揚げはこんにゃくじゃなくて、豆腐が入ってるの……!!」

(変な夢でも見ているのだろうが、碧に声を掛けられて突拍子もない返事を返す。)


「……ハッ…、おでんの具にこんにゃくと結びしらたき以外にこんにゃく製品がもう一品追加されちゃうところだった…!?」

(漸く目を覚ましたかと思えば、訳の分からない夢の続きを口にして。
ゆっくりと上体を起き上がらせれば、目元を擦る。
それでだいぶハッキリしてきた意識を頼りに、碧の方へと向いた。)

「あれ…?君は誰……?」

うん
俺が誰かは今非常にどうでもいいことだね
(パン、と何気ない動作で、目の前の少女の顔の前で手を叩く)
今の問題は、君がなんで外で寝ていたか、だよ

「そっかぁ…どうでもいいのかぁ…?なるほど…?」

(なるほどと言っておきながら、口調は明らかに疑問詞。
これでは分かったのか、分かってないのか謎である。)

「うーん…。なんでだろう、私にも分からない……。」

(明らかにショボンと落ち込んで)

「…………
…あ、そうだ。昨日夜更かししちゃったんだよね。それが原因かな。
うん、きっとそうだよ、昨日夜更かししちゃったからこんな所で寝ちゃったんだ。

起こしてくれて、ありがとね。」

(少し考え込むと、次顔を上げたときには閃いた顔をしていた。
そうだそうだ、昨日がんばり過ぎたせいで、さっき歩きながら寝ちゃったんだと。
こんな所で延々寝込けっていたら誰かに踏まれていたかもしれない。
そう思い、ふわっと咲いた笑顔で碧に感謝の気持ちを伝えた。)

(夜更かししたくらいで人が道で寝るか?寝ない気がする。いやそれは今は瑣末な問題だ。そこまで瑣末でもないけれど)
俺みたいに、起こしてくれる人ばかりとも限らないから、眠い時は素直に家で休むといいよ

「うん、そうだね、今度からはそうしようかな…。
踏まれたくないもん…。」

(今度は踏んづけられる想像をするだけで、ちょっと落ち込んでしまう。)

「見つけてくれたのが優しい人で良かった。君は私の一種の恩人だよ…!うん
さっきは聞けなかったけど、お名前聞かせてくれる…?

あ…っ、人の名前を聞くときは自分から…って良く言うよね。忘れてた。
因みにね、私は菜々宮千晴って言うんだよ。」

俺?俺は碧麟
(宝塚の男役は、オフの日でも、ファンの夢を壊さないために男に近い服装をとる。碧はそれが特に顕著で、彼が着る服は男物のスーツか燕尾服。それに絞られる。今日来ているのは燕尾服だ)
初めまして、菜々宮さん

「なるほど…?覚えやすいかも…。
私と似た名前なんだね。」

(また疑問したように納得するが、今度はちゃんと分かっている…筈だ。
普通、一つの文字もかすりはしない名前を似ているというもんじゃないけれど。
相似の判断の基準が"中性的"なので仕方ない。
まあ千晴の場合少し女性っぽいかもしれないが。)

「うん。初めまして、碧君。宜しくね。」

(どうやら、碧の名前は本当に聞いたことがないらしく、宝塚に所属しているのも知らないので、片手を差し出し平然と握手を求める。)

「えへへ…よろしくね…。」

(握手をして貰って、かなり嬉しそうに綻び顔を続ける。)

「え…?あ、そうだね。
でも、"りん"と"ちはる"って似てないかな?
ほら、男の子でも女の子でも使える名前って所が。」

あぁ、なるほど
たしかに、俺の名前は男でも女でも行けるな
そういうことか

(それは芸名であって本名でなく。タカラジェンヌとして許される範囲で、限りなく男に近い名前を選んだだけ。ゆえに男女ともに使える名前であるのは当然のこと。本名も[ユウキ]とかいう男女両用ネームではあるが。)

「うん、私の"ちはる"も、男の子でも女の子でもいけるしね…。」

(現に"私"の性別は男性なのだし、そういう事で良いのだと思う。)

「あと…雰囲気も似ているような…気が……。
う~ん、やっぱり気のせい……かな。
碧君はしっかりしてるもんね。」

(可愛いというより格好いい相手の恰好と、『俺』という自称のせいで完全に碧を男と思い込んでいるため、違和感が渡る。
その何処かしっくり来ない感覚は、『私と似ている雰囲気な気がする』と言うあやふやすぎる印象で現れた。
自身が女装をしているから、男装をしている相手に何か悟りかけたのだろうけど、結局は分からないままだった。)

しっかりしている、なんて言われると照れるね
そういう印象を抱いてもらえたなら、随分嬉しいよ
仲間内からは、あまりそう言ってはもらえないから

(そりゃあそういう風に[振舞っている]のだからそう思ってもらわないと困る。そう思ってもらえなかったら、俺の演技が下手ということなので速攻小池先生のところにはしっていこう。あの人怖いけど腕は確かだからね)

「へぇ…?そうなんだ…。
でも、うん。嬉しいなら、正直に言って良かったかも。」

(彼のいう仲間って、多分自分よりも親しいだろうから、私よりも何倍も碧君を知っていると思う。
なら、本当は彼はしっかりしていない人なのかもしれない。
そう思ったけど、しっかりしていると言われる方が嬉しいならそれで良い気がした。
そうして、菜々宮千晴は思考を放棄したのであった───…←)

じゃ、早めに帰って寝ろよ?
くれぐれもまた道路で寝るなよ
(話が一段落したことを悟ると、菜々宮の頭を軽く撫で、歩き出す)

「ん~…そうでござるな…」

(思考停止に加わって、家に帰って寝る事を促進されると、逆に何だかここで眠くなってくる。
口調が可笑しいのもその所為だ。ねむねむテンションになってしまった訳である。)

「ふぁ…。あ…?
じゃ、またね……?」

(唐突に頭を撫でられた事で、間抜けな声が飛び出る。
慣れていると言えばそうなので、別段驚きもしなかったが、頭を撫でられるのは好きだ。
なので、心地よさで更にまた逆に少しだけ目が覚め。
別れの言葉を告げながら、笑って、手を振って、碧の背中を見送った。)

「あ…連絡先聞き忘れちゃった……。勿体ない。
お友達に…なりたかったな…。
うーん。また、会えるかな…?」

(そして去り行く彼の姿が見えなくなった頃に、現れた後悔で肩を落としながら、自分も自宅への帰路を歩み戻るのだった。)

  • 最終更新:2018-02-16 20:29:36

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