星x桐間
Chapter1
1日目 ― 星 日菜子 → 桐間 海人 以下交互
肉の臭いがひどい大ホールを後にした星は調理室にやってきていた
ぼーっと中華包丁を眺める。
これで右腕を切り落としてやればこの腕輪も外せるんじゃないか、と思いながらも
そこまでして生きる理由もないのでしないが
……まぁ、そんな冗談はさておきまずは食糧や水の調達だろうか
棒付きのキャンディーやココアシガレットでは飢えは凌げないし
このタバコも20本で足りるのだろうか……なるべく控えよう。
デスゲームってことは、これは誰かが見ているのだろうか。
こういった命の掛け合いは視聴者がいて成立するものだ。
つまり、私たちは見世物になっているわけだけど、一体どんな悪趣味なバラエティーだか。
「ま、知る由もないか」
ふぅ、っとため息。 このままではタイムアップまでの人生だ。
まぁ、悔いはないが暇つぶしに問題を考えてみようか。
●●の間、束の間、お茶の間、幕間、インターリュード さっぱりね。
ヒントが少なすぎる
「というより、ヒントは探せってところかもしれないけど……」
と、ぶつぶつ独り言を漏らして食べられそうなものを探している
答えを入力して出ていくゲートが開くまで時間がまだあるか...次のステージがある可能性は高いと見たし、とりあえず赭愛がこのステージを脱出するまでの食料があるかだけ見ておいても問題ないな
(そう言うと調理室へと入る、内装はまさにレストランのキッチン、と言ったところか、大きな冷蔵庫もあるし期待してもよかったが先客がいた)
...お前も食糧問題を確認するためにここに来たのか?
「お前も、……ということは目的は同じみたいね
……そうね、謎解きと殺し合いが目的なら、飢え死なんて面白くないだろうから
食料は豊富みたいね……。 取り合うことはなさそうよ」
と、簡潔に結論と敵意のなさを示す。
食べ物の取り合いで殺し合う、なんてことがないように
無駄な血を流さないために
目の前の男、私と同い年くらいだろうか。 そんな感じがする。
「私、星日菜子。 二十歳。 あなたは?」
一応、名乗っておこうか。
呼び合う名がないのは会話をするうえで不便でしかない。
ありゃ...まぁ俺と同じくらいだな、とは思うけどまさかぴったりなんて、俺の名前は桐間 海人だ、星日と同じ二十歳のしがない大学生さ
(そう言うと殺し合いに発展する事は可能性としては極端に少ない、と付け加えると)
...このゲーム、極端な話答えさえ教えなければたとえどんなにギリギリでも『ヒント』の範囲で済ませれば生きられる可能性もある...どんなに答えに近くても『ヒント』だったら生きられると俺は見たからアホみたいに馬鹿じゃなければ全員脱出もあるね、少なくとも殺し合いさせるんだったらもっと上手くやるだろうしね
「星、日菜子よ。 巨人の星と同じ」
私の言い方が悪かったのだろうか、まぁ些細な問題だから別にいい
同級生なのね、その分は気が楽だわ。
「桐間君、貴方が言いたいことを軸にすると、この一件の首謀者は謎解きをさせるのが主であると言いたいみたいね。 私たちを集めたのは何か大きな謎を私たちが代わりに解かせるためで、それはその腕試しにすぎない、 それを死という恐怖で煽って謎を解かせようとする」
という仮説が成り立つ
だとすると、生に無頓着な私を選んだのは失敗だけどね
「でも、主催者側から直接手を出さず、殺害をさせあう意図、せっかく集めた頭脳を見世物で爆破する行動に矛盾があると思うけれど」
例え頭が良くても 殺されてしまっては意味がない
「まぁ、謎解きも殺し合いも含めて 娯楽 として見世物にされているんでしょうね」
それがこの状況に一番合っているきがする。
頭の良い奴はとっくに謎なんて解けてるさ...頭のいい奴はすぐに消えるだろうし、まぁ誰かと手を組んでたら別になると思うが
(そう言うと冷蔵庫の中を物色し始めて、結構食料あんのね、と言いつつ)
主催者側は寧ろ殺し合いの方を娯楽として見てくる方が高いんじゃないか?食べ物もない時になったは殺し合いが主流になってくるだろうし、それまで我慢してくる...可能性もあるな
「ま、どうでもいいけれどね」
と、吐き捨てる。
主催者がどういう思いでこんなことを考えてるかなんて興味がない
「桐間君、もしここから出たいなら
そこにある包丁で私を殺せばいいよ。」
冗談、を言ってるつもりはないが
「貴方が生きたいと思うなら、の話だけどね……」
一応、問題は考えるつもりでいる
無意味な死だけは嫌だからだ。
だが、意味のある死なら話は別である。
それは自分の人生に 意味 価値を 見つけたことになるから
...何言ってるんだ、って2時間前程度の俺なら言ってたかもしれないがあいにくもう答えと断定こそできないが可能性のあるものならできたからな
(教えてくれた人がサイゲデリックな飲み物を作る変人だったけど、と加えると)
...星は、生きたくないのか?、いや、発言の仕方的に自分の価値を見つけた事を考えれば...生きる価値を失った、ってことかな
「……あまり察しすぎるのはよくないわ
神経質になると疲れてしまうもの」
まぁ、実際その通りなんだけどさ
「いや、一応謎は解くよ、
解けなかったらそれほどまでに自分は生きる価値がないってだけだし、でもね」
ふぅ、っと小さくため息
「命の価値って、人によって違うでしょ?
桐間君が、生きてつかみたい夢や未来があるなら
どんな手を使ってでも生きることは悪くないと私は思うんだよ」
エトワールの夢 それは無い
今、未来 私はそれがほしかった。
輝かしい未来がほしかっただけなんだ。
でもそんな輝かしい未来なんてないから。
「星『は』生きたくないのか、ってことは桐間君には生きたい理由あるでしょ?」
察しすぎるのは良くない、ってよりか寧ろ分かりやすかったからな、そういう雰囲気が出てたし
(そう言うと俺に生きる理由あるでしょ?、と聞いてきたのでしっかりと答える、多分いっぱいあるだろう)
んー...まずは遊戯王強くなるでしょ?一人暮らしだからもっと料理上手くなる、最近二十歳になったからここで死ぬ前にビール飲む、ってかここで飲めるけど初めては普通って決めてるからね、後はまだ伝えてない事を好きな人にいう...とかか?、とにかくいっぱいあるから
へぇ、羨ましい……
「だったら、こんなところで死ねないね
いいよ、殺しても」
と、中華包丁を取り出して机に置く
「いっぱい生きる意味があるなら
生きる意味のない私よりもその命には価値があるという事
まぁ、この問題が簡単だっていうなら、次の問題で詰まったとき私を殺してもいいけれど」
そこに私がいる保証がない
第一この問題すら解けていないし
それで私が死んだら本当に犬死である。
犬死だけはイヤである
「……どう?」
...はぁ、だーかーらー!
(そう言うと何か違うなぁ...みたいな雰囲気を出して宥めるために星の頭をぽんぽん、とすると)
生きる価値を失ったなら...また生きる価値を見つけるために生きる事を楽しんで、生きる価値を見つければ生きる事を楽しめばいいじゃん?なのに何でもう私は生きる価値がない...みたいに決め付けてるん?、楽しめる事を見つける事に楽しめば人生楽しんでるじゃん、生きる価値を見つけるために生きてればそれだけで生きる価値があるじゃん、まだ俺も星も若いんだから...これから楽しむ時期なのに、死んだらもったいないぜ?
「わふっ!?」
不意打ちだった、思わず思考が停止する
「この状況で楽しめだなんて、無理な話だわ、さすがにね」
と、苦笑する。
こんな状況なのに元気ね……
「とりあえずこの話はやめるけれど
問題についてはどこまで理解できたの?
生きる価値も理由も、見つける前にまずそれをどうするか……」
目先の問題、それを片付けないと何も進まない。
だからこそ生きる殺すの話になるのだ。
そりゃ、私だって、本当は見えない未来を見てみたい
...正直、こんな小学生でも解けるなぞなぞ程度の問題なんかどこも探索しなくても大丈夫だ、ってことを天才に教えてもらったからな
(マジで頭おかしくて飲み物作るセンスが凄いやつ、と付け加えておくと)
...腕輪に最初の放送の再生機能がある事を知っているか?、正直こんなルールは単純だしなぞなぞ、の内容も私はどこ?と単純正直リピートする価値もない...じゃあなんで何回も再生できると思う?
「もともと脱出する気なかったから、何も考えてないよ」
でもまぁ、そこまで言い切ったってことは
彼はもう答えまで出かかってるからなのだろうか
さて、ゆっくり整理していこうか。
Q1 なぜリピートできるのか
この選択肢を間違えたら発言ゲージ的なHPが減りそうだな……。
「問題文に答えがある、ヒントがある とかかしら?」
ドヤッ って答えて間違いならもう殺してほしい
正解、だって特に必要のない説明と問題文なんて再生しなくてもいいのに再生できるなんて事は何か隠されてる、って事だよね
(じゃあ後は紙を見ればわかるか...といいポケットからケイジからそのまま貰った紙を出す、字は結構綺麗)
...女からしたら字が汚い字かもしれないから読めないかもしれないが、説明を移し替えたものだ、後はこれをじっくりと読めば『私』は『何』に挟まれてるかが分かる
「疑問符は音声と文字じゃ変わってくるけど」
と、メモにぼそりとつぶやく
そこに関しては気にしない方がいい、強いて言うなら気にしたらさらに迷宮に入るから気にするのはやめろ
(そう言うと説明を続けていくと)
.,.間、って言われたらもちろん最初は部屋だの何処だの、と想像しちまうよな?、けれども説明文をリピートできる時点で説明文の中に答えに近いものが隠されてる可能性が高い...つまり問題文さえ読んでりゃ理解力が普通のやつでも解ける、ってこった、んでもって次のヒント、解答欄には色んな文字が入るぞ
「文章信じるか、音声を信じるか
そこは重要じゃないと言いたいのね
●と●の間という出題形式であれば坩堝にはまるわ」
問題が音声から流れているのだから音声で発することのできない疑問符を気にしなくてもいいという事だろうが、そこらへんが曖昧であれば
文字に置き換えられた罠にはまる……のだが
「●と●の間、という表現ではなく●●の間ということは一文字を示してるわけではないという事、でしょうね。」
ルールに抵触しない範囲で問題を徐々に氷解させていこうか
ここまで来るとその●●も絞られてくる
●●が漢字か平仮名か、数字か記号か、いやわざわざ2文字ならそれを信じよう
...じゃあラストになるかもしれない質問、「私」は火の豪華客船の中にいるでしょうか?
(試すように調理台に肘をついて星の方を見ると)
この質問さえわかりゃあとは楽チンに終わるよ、ちなみに俺はこの質問、間違えた
「……目に見えないのでしょうね。」
きっと音声が鍵なのであれば
そういう事
「……いないんじゃ、ないの」
で、間違えてたら本当に殺してほしい
大正解、じゃああとはもう分かるね?、最初の音声を移した紙を呼んでればじわりじわり、と答えは読めてくる...きっとね
(そう言うとその紙は返してもらうよ?、付け加えて)
...答えがわかるまでじっくりと使うといい、俺はまだ使う気でいるからな、できれば早めに返してくれると嬉しい
「もう分かったわ、
答えは言ってはいけないルールだから
私の質問の回答とあなたの考えが同じなら右目を瞑りなさい
いま、『私の喉から貴方の耳を繋いでいるもの』
そうでしょう?」
紙を返してそう尋ねる。
...こりゃまた随分と答えに近い尋ね方をしてきたね...確かにそれもそうかもしれないけど...残念、俺は違ったね
(そういうと左目でウィンクをするように瞑ると)
...まぁ、俺が先に行って俺が死ねば合ってるかもしれないから、俺が通ったら違ってた、ってことにしてくれよ?じゃあ紙回収ね
「なるほどね……でも、似て非なるものなのね
なに、『答えを言ってはいけない』ルールしか課せられてないわ
こういうものは『いかにルールの穴を突くか』でしょう?」
そう考えると実に甘い
「しかし、人によって十把一絡げの解釈ができてしまうなら
問題として破綻するものよね。
なんなら、私が先に答えましょうか?」
捉え方によれば沢山答えが出てきてしまうからな...正解を絞るのは難しそうだ
(人によって捉え方が違くて答えが沢山出てるのはなぞなぞとして破綻してるかもな、というと)
...俺は相方が待ってるだろうしそろそろ行かせてもらうとするよ、もう個室に帰ってきてるかもだけど
「いい加減なルールに縛られるんじゃ参加者もたまったもんじゃないだろうね……」
ふぅん、他にも参加者がいて協力の姿勢があるのね
私はもう一度再考してみようかしら。
「それじゃ、生きてたらまた」
こちらこそ、また会えたらな
(そう言うと調理室から出ていくのであった)
- 最終更新:2018-02-21 19:05:55