早永xクロエ
Chapter1
1日目 ― 早永 めい → クロエ 以下交互
かくれんぼ…の前にお仲間さんだよね~。
(各々が散らばった後、人捜し(――)しようと歩きながら辺りを見渡せば隅っこにダガーを持っているコが。
ホンモノだとめいの身が危なそう。でも他のみんなは何処かへ行ってしまったし、話せるとしたらそういう人が残っているくらいで。
可哀想に…。掬いあげるかのように、スマイルから心配した顔付きに変え。痛そうな反応に最初の声掛けは決まった。
ホンモノを想定してるのか一定距離を置いて、中腰になりそっと刺激しないように声掛けをする。)
ねぇ、キミ…ヘーキ?ドコか痛いの?
「あー、あ、……ィ、いた、いたい…?………ぅ、こ…ここ」
(相手の顔をジ、と見つめる。様子を窺っているのか、それともまた別の気持ちか。
話しかけられた反射か何かでダガーを咄嗟に仕舞っては、〝左腕〟と言わずに態々右手で自身の左腕を指差した。だって、分からないのだから。その〝ことば〟と言う奴が。)
「あ、うう…っ…だ、れーッ?」
(静かな記憶の中で、その片隅にある記憶の破片から新たに思い出した〝ことば〟を口に出す。
“誰”という短くてちっぽけな言葉でも、クロエにとっては大きな進歩だった。赤子が言葉を覚えるときみたいな。
…相手に恐怖して情報を引き出そうしているわけでもなく、殺されるかもしれないなんていう警戒心もなく、その〝ことば〟は純粋な好奇心から来ていた。)
むむむ??知らない?こーいうとき、左腕、い た い って言うんだよ~
(ダガーをしまったことで少しホッとした。ダガーとめいは知らなくても立派な刃物だし、特に顔は傷つけられたくはない。キズつきアイドルって人気出なさそうなイメージだし。
痛む箇所を指で指す動作にキョトン、首を傾げ意味を汲み取ろうとしても結局意味は悟れず、ゆっくり話せば飲み込めるかな。もしかして頭パニック過ぎちゃって読み取れないのかも。落ち着かせるよう区切って読みとらせようとして。)
めいはね~、め い 、って呼んで!
(また単語を分かりやすくめいの所だけ強調して言って、暫く置きめいと呼んでと言う。早永という苗字よりもめいという名前の方が明らかに言いやすいだろう。)
「あー!う、ひだりうで、いたい…」
(なにかを思い出したかのような声を出しては、〝左腕痛い〟という相手の言葉をそっくりそのまま復唱した。
二コリ、と笑顔になっては早永に向ける。特に何か含みを持たせた笑みではない。子供が良くするような無邪気な笑み、といえば分かりやすいだろうか。)
「めい?ふふ、めい!
わ、わたし?わたし!わたしね、クロエ!ふふふふ、めい、よろしくね!!」
(満面の笑みでバッ、と立ち上がれば自身の名前を教える。
本名かは分からないが、彼女にはこの名前しか思い出せない。だったらスマートウォッチ見ればいいのにと思うが、彼女にそんな思考はない。残念な頭である。)
そーそー
(分かってくれた!掬いあげられたこと、笑った事に対してだろう。嬉しいような感覚で、うんうんと満足げに頷き。
とりあえず左腕の怪我を何とかするつもりはあるらしいが、言葉を沢山喋っては混乱させてしまうかもとなったからだ。)
わぁーい♪クロエちゃんヨロシクー!ね、ね、ヨロシクのギューしよっ??
(満面の笑みで連呼されてお花畑思考というものか、花が咲くような天使な笑みで返し、テンションが上がりでもしたのか、ダガーで切らないと判断したのか、近寄り手を差し出す。握手と言っても分からないかもとギューという擬音に置き換えた。めいは死人に黙祷したあとでよくハイテンションで接せられるものだ。)
「ぅ、ふぅ…!よろしくーッ!!
ぎゅー?うふふ、ぎゅー!」
(無邪気に微笑んだまま、少し戸惑いながらも同じように手を差し出して〝ギュー〟をする。
フードは被ったままだが、十分に顔は見えるだろう。
こんな場所に来てしまったというのに、ソレの恐怖を全く感じさせない笑顔はある意味不気味かもしれない。
然し、状況が全く分からないクロエにとっては至って普通なのである。癒し要素になればいい。)
「ね、ねッ!めい、〝たんけん〟しよーッ!」
(忘却された記憶の何処かにある〝たんけん〟と言う言葉を、意味も殆ど理解せずに語感だけでそれっぽく使用する。
悪意も何もない、好奇心。この先何が起こるかなんて全く考えていない。
握手している手を、ランランと揺らして。)
うんうん!ぎゅー
(ぎゅーと握ってくれた手を握手会のように握って真似して反復。この状況下「一人爆発して死んだ」「居る場所はどこ→かくれんぼ」と最低でもクロエ以上には今居る状況を呑み込んでいる。拉致された状況に戸惑いもしたし、死んだ死体に驚き悲しんでそのコを思って涙を流したのだから。少なからずコロコロ変えられまいし、恐らく表に出さない精神力が高いのだろう。)
いーよ!探検、いっしょに、行こー♪
(ランラン揺らしている手に自身の手を任せて、離すのなら離せられるやんわりとした感じで、繋いだままでも受け入れるだろう。にこやかにして、また分かり易いように1句1句分割して話す。気遣いのつもりといったところ。
そして、マップすら見てないので希望の場所以前に、行き当たりばったりのThe探検になるだろう。)
「うふふー!いこーッ!!」
(手はそのまま繋いだままで、ウキウキと歩く。周りの雰囲気とはかけ離れており、ほんわかとしている。
偶に早永の方を見ては、二コリと笑って。少し早永のことを気に入っているようである。)
「あははー!めいと、いっしょにいると、なんか〝うきうき〟するーッ!」
(そう元気な声でいえば、手を離してダダダと走り出す。
行きたい場所も何も分からないため、取り敢えずまっすぐ進む。操舵室というところの前まで走れば、止まって早永の方を向いて『こっちこっちー!』と言うように手を振る。)
しゅっぱーつ♪
(先程のキョロキョロが嘘みたいな姿に、腕痛いの忘れちゃうほどの痛みだった?と案じながらも手を繋いだままそれらしき"タンケン"の雰囲気に乗って、着いていく。うろちょろ周りを見てはクロエちゃんと時折目があってもニコニコしていた。
こちらまで花が飛んでいるほどめいもふわふわした心地で。表情までリラックスしているようだった。)
クロエちゃーん!待って~~!
(待ってーと紡いでいるが表情は追いかけっこをイメージしてくれればそれに近いだろう。ダダダの勢いには及ばないが、手を振るクロエちゃんにトトトと小走りで操舵室の前まで行き。)
ほぇ~?ソーダ室?
(見上げれば漢字でドア上に記されていて、読めないほどではないらしい。
「うふふーッ!めい、はやくー!!」
(ワクワクが抑えきれないようで、ウズウズと身体をさせながら早永を待つ。
早永が来た後、手を繋ぎはしないものの早永に近付いてニコリ。
操舵室の扉のドアノブを握りながら、やはりウキウキとしている。)
「そーだしつ??なにそれ……分かんないーッ!でもいいや、めいー、開けるよー!!!」
(考える事を放棄して操舵室の扉を開けようとする。
後先なにも考えない子供そのものだが、実質似たようなもんなので問題はないだろう。
そーっ、と中を覗き見してみる。)
ゴメン、お待たせっ!ソーダ室はねぇ、船、グォーンってするところだよ~!
(待ちきれずウズウズしているのに、全力疾走はしなかった。けれども、待たせてしまっているのだし、悪いという気持ちはあるようで。それと、操舵室の説明の擬音付きでして)
わかったぁ、オープン~♪
(手を重ねるわけにもいかないし、開けたタイミングでオープンなんて掛け声らしきものをいって、中を同じく覗き見する。めいの方が身長低いのでくく、と背伸びして。)
わぁ~機械たっくさん!それに~、クルクル回せそうなのもあるよ!
(見えるは機械と、大きな舵。大きな舵はクルクル回すと言い換えて。
「ふね?を?ふふ、ぐぉーん!!ふふふふ、ぐぉーんッ!」
「おーぷんっ!!」
(気に入ったのか、何度も〝ぐぉーん〟と言っては部屋の中をキラキラとした輝いた目で見て。
見知らぬものがあり過ぎて『うわぁーい!』となっているのだろう。
より一層笑みを増しては早永の方をチラリと見て幸せそうな表情をする。)
「おーッ!そーだしつ〜!!!」
(自身と早永の身体が入るくらいに扉を開けては、耐え切れないのかダダダーッと若干走りながら操舵室へ入る。
目の前の舵とか機械を見ながら、興味津々にワクワクと跳ねている。
カチカチと電源の入っていない機械を押したりしている。これで死んでも正直文句は言えない。)
あはは☆グォーンお気にーりー?
(意味を分かっているのか、分かっていないのか、グォーンを何度も言って。恐らく後者だろうが、この際気に入ったならいいや。幸せそうな表情にこちらの表情もハッピー一色に染まっていく。ついでに口調も幼くなったような…?)
右、旋回しまーす!
(扉が開けられめいもクロエちゃんのあとを追うよう小走りで中に。そして、見渡し機械より興味がいったのが、大きなクルクル回す回す(=舵)である。
カチカチを横目に、舵に近づいてクルクル操縦した気になっているのか、全然成りきれていないのだが、らしきことを言って満喫しだす。電源が入っていないことに気付いたのだろうか。
これでスイッチが入ったとしてやらかしても自己責任だ。いや、この場合道連れか。他の人が見たらどう思うのだろうか。
左にー、せん、かーい…??
(次いで左にクルクル回して、カチリ…ボタンを切り替えあれ?マズい?かも?となったが、電源が着かないだろうと踏み、疑問系ながらも言い。…危ない橋を渡っている自覚はあるようだ。
爆発スイッチだとしたら笑えない事態に陥るのだが、知ってか知らずかグルグル回す。探検どうした?左腕どうした?)
オンしたら面白いよね~
(面白いとなんかフラグを建ててしまっているが、、、なって欲しくも無い。仮に付いても十中八九良くない事が起こるだろう。2人とも船遊びごっこを呑気に楽しんでいるものだ。)
「あはは〜!!せんかーいっ!!」
(足で動かすレバーみたいなのありそうじゃん?だから手足を動かして一種の音ゲーの如く叩いたり引いたり押したりしている。
果たして此奴が謎を解くことはあるのか。いや(反語)、ない!…多分誰かと協力とかしない限りしない気がする。
まず此奴問題聞いてたのか?スマートウォッチの中見たことあるのか?っていう。因みに何方も答えは『NO』てある。)
「ふふふ、だねー!!おん、おんーッ!!!」
(ONになれば面白いのに、…なんてどうしてこんなフラグを建てるんだ此奴は。
いっそ氷山の一角にぶち当たって良い感じにクロエだけ巻き込まれれば良いのに、なんて思ってしまった。
いつまで続くかわからないクロエの音ゲーの時間は、クロエの和かな笑みと共に続いている。酷え。)
おん♪リズミカルだねっ!ダンサーみたい~。
(と言いながらいつの間に舵の上に腕を組むようにして置き、体重を舵前にしてぐでん、と寄り掛かってニコニコクロエちゃんを眺める。見ているだけでお腹いっぱいになったのだろうか。
体力はほぼ休み無しであるとはいえ、省エネだ。めいもめいでどうするのだろうか。未だ見てない、かくれんぼと言っている、不安要素ばかりだろう。)
・
・
・
ねーねークロエちゃん探検再開しなーい?
(音げーらいぶ?の時間が暫くたったあるときそう提案する。探検といっても一カ所しか回っていないじゃないか。)
「───、ふふ…だんさー!!」
(一瞬、時が止まったかのように動きを止める。然し、すぐにまた動き出しボタンをカチカチぽちぽち。
〝ダンサー〟というものに特別何か引っかかるようなことがあるわけではない。
でも、なんとなく、人前に出るような何かがあったような──────なんて、思い返してしまったのだ。)
「うん!さいかいするーッ!!!!」
(暫くやって少々クロエの方も飽きてしまったのか、その要望を聞いて快く返事をした。
ガチャリ、と操舵室の扉を再度開けては外へ出て行く。)
「ね、ねッ!めい、次何処行くー?」
(自身はこの場所を何もわからない為、早永にそう尋ねて答えを提示してもらおうと思った。
マップ見ればいいのに、この記憶喪失の人間は話を聞いてないので分からないのである。)
(カチポチカチポチ楽しそうにリズムを取っているクロエちゃんは漸く探検する気分になったようだ。ぐにーとした体勢からピンと真っ直ぐに立ち復活?して後をすぐに追い、)
どーしよっかなっ♪
(迷っているくせに唇の下に人指し指を当てニコニコと全然困っていない様子である。迷うのはいいから腕時計の地図みろ。)
きーめた!んーと、フワンてなるエレベーター乗らないっ?
(閃いたとでも電球エフェクトが頭の上に出ていそうなポーズ(手のひらを添え拳ででポンッ)と手を叩き、エレベーターらしきものを指差して思い付きでそういった。小走りの時、エレベーターが目に入ったのだ。意外にも小走りの時に観察していたのである。)
「ふふ、うふふふーッ!!どこでもいいよぉ?」
(わくわくドキドキ、楽しい〝たんけん〟の次の目的地の回答を待つ。
暫くの間〝ことば〟に触れてきたからか、最初よりも語彙力が上がったような気がする。
然しさっさとスマートウォッチ見ろよ。簡単だろ。)
「ふわん?うん、ふわーん!えれべーたぁ、乗るーッ!!」
(その擬音が気になり、好奇心に勝てず〝乗る〟と返事をする。
そう思えば、すぐさまエレベーターらしき扉に向かってダダダーッとまた小走りで近付いていった。
すぐにエレベーターらしき扉が分かったのは、段々と(どうでもいい)情報を思い出しているから…である。)
乗ろっ♪っまってー!(ポチッ)っあ…。
(3Fを全部巡らなくても満足。探険といえば全部探検だもんね!地図無い方がスリルあるよね!←
らしい。知っていて呑気に居られるって精神ずぶとい。どうやらこちらも地図なしで進んでいくらしい。地図どころかホワホワしている状況だ。
脊髄反射?小走りで走ったと同時に同じく走って、エレベーターの前で止まり下ボタンしか無かったから下の矢印をポチッと押してしまった!いつもの癖で押しちゃったと子供が悪戯をやらかしてしまった表情でクロエちゃんを見る。
そんなことも関係なしにエレベーターは数字を切り替えとんとん拍子に階を登っていき。数字が3になったときにエレベーターの扉が開いた。機械はベストな機会など待つわけもないのだ。
「うぇ?……ふふ、あははー♪」
(地図どころか、スマートウォッチ見てない。というかスマートウォッチ気付いてるんかコイツ。
早永がボタンを押して、やらかした顔をしているのに気付く。それを見て、察して、嬉々として笑う。
エレベーターが無慈悲にも開き、ウキウキと。)
「むぅーッ!乗ーッろッ!!」
(カモンカモン、みたいな感じで手を振りつつさっさと乗り込む。
るんるんと体を揺らしながら、早永が乗るのを待つ。)
やっちゃったー…。
(ポチカチ音ゲーに乗せられたのか馴染みのあるエレベーターのボタン、ポチッとなを見事にやらかした。こんなようでいてスイッチ系には手を出さなかったのだ。舵は回しても平気とでも思っていたのだろうか。エレベーターのボタンが爆発スイッチだったら2人諸共ドッカーン☆…まぁ、先人が押した地点でエレベーターが破壊されていないから安心なのだが。爆発しないと分かってホッとしてみせる。)
乗ろ乗ろー♪
(相変わらず切り替え早いな。もうめいに普通を求めるのは諦めた。手招いてるクロエと一緒に乗り込み次は遠慮なしに2Fのボタンを押し、閉ボタンを押せばフワーと下がり、2Fになり扉が開く。)
「ふふふーッ!やっちゃったねーッ!!」
(そもそもハチャメチャにボタンを押しまくっていたクロエには何が〝やっちゃった〟なのかよく分かっていない。でも相手が〝やっちゃった〟と言っているのだから、多分何かしらやらかしてしまったのだろうと思い。
まあ早永が押してなくとも、遅かれ早かれクロエが押していたので何ら問題はない。)
「いえーっい、ふふーッ♪」
(早永が押した2F…つまり二階に到着するのを待ちながら、ウキウキと体を軽くはずませる。
そして2Fに到着し、エレベーターの扉が開いたかと思えばすぐさま二階へ飛び出した。)
(2Fを示す2の数字が明るくなるまで大人しく待つ。開けばどっち方向に行くか賭けに出る。エレベーターが開いた途端めいは先手を打ったとレースをマネてダーッシュ。
さっきから走りまくっているクロエは少なからず遅くなっているだろう。並んでみせよう。一定スピードで走れるほど体力があったらこの余力を残したダッシュは軽く抜かされてしまうが。
逆方向だったら急ブレーキ、同じ方向だったら横に並ぶつもりでいる。
突っ走って誰かに止められる側のめいが追い掛ける側だ。今まで見失わないように小走りで追い掛けていたが、偶には出し抜きたいのか。ちょっとしたマラソンのような感覚。クロエの体力は尽きないのだろうか。)
れでぃ…ごー!
「ふわーッ!!」
(駆け出す二人。
やはりクロエの体力にも限界があるようで、最初に出来た〝差〟も何時しかなくなっていた。
そりゃずっと全速力で走っていたのだから仕方ない。
早永と横並びになるようにして取り敢えず走り続ける。目的地など有るわけがなく。)
「……ッ、どふ゛ーッ゛!?!?」
(1Fならば機関室がある方。
だが2Fとなると、その先は唯の壁と化している。
扉を開けて、走りの勢いのまま入ろうとした。…然し、どうだ。扉は絶対に開かない。となると、クロエはそのまま壁に激突するだろう。それも、勢いよく。)
と、と、とぉ…!?
(賭けは当たり、同じ方向。急ブレーキはせずに駆けゆき2人横に並んだのを見て、スピードを合わせつつ走った。×印が書かれている船内地図を見ていないのだから鍵が掛かっていることすら知らない。
操舵室のように開いてるものだと思ったのだろう。続けて入ろうとスピードを緩め後ろに行けば、クロエは激突。慌てて後続のめいも止まろうとしたが、弱まっただけで止まれず。
壁同様のドア横に手を付き顔は守ったようだが、手がその勢いをモロに受ける。)
っう~…ったい…
「ぃ゛……うう…痛いぃぃ………」
(派手に激突したクロエは、どうやら頭を打ったようで。
床に倒れ伏してはおでこを手で抑えて悶える。
頭を打った衝撃で何か思い出せたのか、と言われれば答えは〝Yes〟だ。然し、それが重要なことかと言われれば〝No〟と言わざるを得ない情報ばかりだった。
地図を見ないからこういうことになるのだ。自業自得だね。)
「…ッふ、ぅ……何で…開かないのぉ………」
(扉が開かないことに対して疑問と少々の怒りを露にする。
痛みは中々引かないようで、少しだけ涙ぐんでは言葉を出した。
グ、とより一層フードを深く被っておでこを抑えながら俯く。)
うぅ~…手が…、おててがぁ…。
(手が犠牲にならなければ強打とまではいかなくとも、額や顔面もぶつかっていた。とりあえず心配より“痛い”が脳内を占めていたそうで。ドアから手を離しほんのり赤くなった手をパタパタ揺らす。)
クロエちゃん!?
(盛大にぶつかったクロエにハッと意識をやる。めいの手のひらも未だジンジンして痛いというか痺れるが、慌てた声を出し俯いて痛がるクロエの方を見遣りわたわた心配する。そりゃああんな盛大にぶつかった様子をみれば心配しない人は居ない。)
「うう、………いた、ぃ…………ィ……」
(バタバタと身体を動かしながら、頭を振り払おうと顔を揺らし回す。
一見ヤバイ人間に思えるものの、先程までの光景を全て見ている人間なら〝痛がってるんだなぁ…〟と察することができるだろう。
然しヤバイ人間であることに変わりはない。痛い、と言っているが動きが野蛮すぎないか。)
「めい、……めいぃ………!!…ぃ、いたいよぉ…………」
(そう心配してくれている早永に対してそう言う。
言って何か変わるわけではないが、心配してくれるのが嬉しい。
困ったりしている時に助けてくれる人間のように思えて、とても嬉しい。
然し自業自得であることを忘れてはいけない。彼女は地図も見ずに開けようとして失敗して激突したのだ。地図を見ないのが悪かったのである。)
- 最終更新:2018-02-28 20:59:41